【解説】障害者の子のために財産を信託する方法

税制上の優遇措置(障害者控除)について

障害者の子のために財産を信託する方法

障害のある子供に遺産を遺した場合、それを管理して有効に活用できるようするためには、子供を訓練することが必要になりますが、障害のためにそれが困難な場合はどうしたらよいでしょうか。

ここでは遺言信託を使った相続について解説していきます。

 

遺言信託-残された財産が幸せにつながるための相続

超高齢社会を迎え、高齢者の介護をめぐる様々な問題、介護や家族から離れて暮らすお年寄りのケア等が話題にもぼることが増えてきています。

家族にとって誰が、どの様に負担するのか等々、多くの複雑な問題を乗り越えなければならない大変さがありますが、障害のある子供を持つ親はさらに難しい問題に直面します。それは多くの場合、親は子供より長生きは出来ないという事です。社会にうまく溶け込むことが難しい子供を一人残していかなければならないことを思うと、心配でたまらないでしょう。

親が元気なうちに子供にしてあげられる事、教育訓練、仕事、そして子供に遺産を遺すことで少しでも子供の将来の不安を取り除きたいと思うのは子供を持つ親にとって、特に障害のある子供を持つ親にとっては共通の願いです。

障害のある子供に遺産を遺した場合、それを管理して有効に活用できるようするためには、子供を訓練することが必要になりますが、障害のためにそれが困難な場合はどうしたらよいでしょうか。一つには残された子供が頼れる相談相手を作っておくことが考えられます。兄弟、親類の中に信頼できる人がいて後を頼むことが出来るならば理想的ですが、その場合にも成年後見制度を利用することによって援助する側にもされる側にもより負担の少ない方法で後を託することが出来るでしょう。

さらに最近注目され始めているのが遺言信託制度というものです。

 

遺言信託とは

遺言信託とはどのようなものなのでしょうか。

この制度は契約者(遺言者)の財産を信託銀行のような信託会社に預けてその財産を管理・運用してもらおうという制度です。

残された子供がまだ年若い場合、または心身の障害を抱える等の事情があり、管理能力が十分とは言えない場合に、この制度を活用することにより遺した財産が残された子供や家族のために活かされるよう備えることが出来ます。この契約は契約者が存命の間、継続します。さらに契約者の死亡後も運用を続け、収益を遺族に分配するサービスも登場しています。このサービスを利用すれば、委託された信託会社は相続財産を管理・運用し、得られた収益を相続人に交付することになりますので、まとまった財産を浪費してしまったり、詐欺などの被害に遭って失ってしまったりというようなリスクを避けることになりますし、遺言者の死後も信託契約を通じて遺言者がのこされた子供や家族を見守り、安定した生活が送れるように支えることが出来るわけです。

 

どんなサービスを受けられるのか

遺言信託サービスを提供している信託銀行等によりサービスの内容は違いがあるものの、主なサービスは以下のようなものとなっています。

・遺言書の作成

・遺言書の保管

・遺産分割に関連した相談

・財産目録の作成

・税金に関する各種相談

・遺言執行者

またこれらのサービスを利用する際に掛かる費用ですが、遺言書の作成管理に関するサービスは20万円~30万円程度、他に年間保管料、遺言執行者をお願いする場合は財産評価額の1~2%程度のようです。実際に相続が発生した時には遺言者は死去してしまってもはや何も出来なくなっているわけですから、相続が遺言者の願い通りに行われるために必要な準備を確実に済ませることが出来るよう各社のサービスを比較検討して慎重に選びたいものです。