【Q&A】障害者(自閉症)の次男に遺産のすべてを相続させたい

障害者(自閉症)の次男に遺産のすべてを相続させたい

障害者(自閉症)の次男に遺産のすべてを相続させたい

私の次男が障害者(自閉症)です。次男を含め兄弟は3人ですが、あとの2人は健常者であり、既に社会人で収入もあるため将来には問題ありません。

私としては障害を抱えている次男の将来を危惧おり、自分の遺産のすべてを相続させたいのですがどうしたらよいでしょうか?

質問者の方に配偶者がいるかどうかがわかりませんので、配偶者がいないという前提で回答させていただきます。

ご質問のようなケースでは相続人は3人の子のみという事になります。

法定相続分どおりに遺産分割を行うと、3人の子が1/3づつを相続することになります。

法定相続分とは異なる割合で相続させたい場合は遺言によって意思表示を行う必要があります。

ただし、子である相続人の場合には遺留分というものが認められておりますので現実には質問者の方の希望通りにする事は困難です。

順を追って説明しましょう。

 

相続人の廃除

特定の相続人(遺産を受け取る人)に遺産を相続させたくないという場合、この相続人が遺留分を持つ直系の卑属(子や孫)、または尊属(父母や祖父母)である場合は相続人の廃除を家庭裁判所に申し立てて認められる必要があります。ただしこれが認められるのは相続人に著しい非行があった場合や、被相続人に対する虐待があった場合などごく限られたケースの場合などのような特殊なケースに限られています。

これは除外して考えてよいでしょう。

 

相続には遺言は必須

法定相続分とは異なる割合で相続させたい場合、遺言書の存在は必須となります。

遺言書によって例えば半分を次男に、1/4を長男に、1/4を三男に、という分け方を指定することは可能です。

ただし、長男、三男の相続割合を極端に少なくした場合は後述する遺留分を侵害することになりますので注意が必要です。

 

相続での遺留分に注意

遺留分とは何でしょうか。

被相続人の配偶者、または子供や祖父母のような直系の卑属、尊属の場合は遺言の如何に関わらず相続分を要求できる最低限の権利が認められております。これを遺留分と言います。

遺留分の割合はこの場合1/2となりますので法定相続分である1/3に1/2を掛けた1/6という事になり、遺言で指定した相続分がこの1/6を下回った場合は、遺留分減殺請求という手続きを経て遺留分を侵害する部分についての遺言は無効となります。

 

事前の相続放棄は出来ない

質問者の希望通り、次男にすべての相続財産を相続させる方法としては、長男、三男に相続放棄をしてもらうことも可能です。

ただし、相続が発生する前、事前の相続放棄は認められていませんので、口約束にしても書面による約束にしてもなんら拘束力はありません。すべて無効となります。

さらに、兄弟同士が仲が良いというような場合でも、相続が発生した場合、それぞれの配偶者や子供といった家族もからみ、思わぬ争いに発展することもあり得ますので、相続放棄による方法は現実的とは言えないでしょう。

 

保険の活用

相続財産とは別に生命保険を活用することも出来ます。

例えば、次男を受取人として1000万円の生命保険に加入した場合、この分は遺産分割に組み入れられることなく全額が次男のものと認められる可能性が高いでしょう。

ただし、この1000万円が特別受益分であるとの主張により裁判での争いに発展する可能性も否定できませんので、この場合には事前に生命保険に加入する理由、そして次男を受取人とする理由を他の兄弟によく説明し、理解を得ておくことにより要らぬ争いの種を避けることが出来ます。

 

相続のキーポイントは相互理解

これらの事を考えますと、キーポイントとなるのは相互理解であると言えるでしょう。

親の気持ちを子供たちに、あるいはその周りの家族に事前に良く伝えておくこと、感謝の気持ちや、心配事などをよく理解してもらう事が争いを避ける為のカギです。

相続が開始され、遺言書を前にした時、自分の相続分が他の兄弟よりも少なかったというのは疎外感やさみしい気持ちを覚えたりするかもしれません。また、自分の相続分が他の兄弟よりも多かった場合でも複雑な気持ちになるでしょう。

もし、事前によく話し合い、親の気持ちを伝えておくことが出来たら、なぜそのような相続割合になったのか、その理由がわかっていたなら、納得して受け入れやすくなるのではないでしょうか。親の気持ちを受け止め、その亡き後も兄弟が仲良く、力を合わせて助け合いながら生きていこうと決意を新たにするきっかけになるかもしれません。これこそ、質問者の一番望んでいることではないでしょうか。

 

成年後見制度の活用

いずれにしても障害を持つ子供を残していかなければならないことは親にとって大きな心配の種と言えるでしょう。

兄弟が仲が良いため、助け合って生きていくだろうと思いたいのはやまやまだと思いますが、障害を持つ兄弟がいる事は他の兄弟に大きな負担を強いる事になります。

せっかく遺した相続財産が詐欺に遭ったり、管理能力がないために有効に活用されなかったりといった事態を避けるためにも、ぜひ成年後見制度の活用も検討してください。

回答者「行政書士 K.I」